日経メディカルの記事より、厚労省も文科省もインフルエンザ履患後の再登園・再登校に治癒証明は不要と

インフルエンザで出席停止になった後、登校・登園を再開する際に求められる。 しかし、学校保健安全法は治癒証明を必須としておらず、その要否は地域で異なっている。沖縄県は医療機関を疲弊させないためにも「意義なし」とする。

沖縄県は、県下の教育機関や民間事業所に対し、インフルエンザ治癒証明を求めることは「意義がなく、控えるよう」ホームページ上で呼び掛けている(図1)。同県保健医療部地域保健課の担当者は「県内では医療機関が不足しており、インフルエンザの治癒証明を求めることは医療機関の疲弊につながると考えた」と語る。

図1 沖縄県のインフルエンザ治癒証明に関するサイト(下線は編集部)

治癒証明の要否に地域差

感染拡大を防ぐ観点から学校や保育所、民間企業などでは治癒証明を求められることが多い。しかし、治癒証明を必須とする法的な規定はなく、その要否は地域ごとに異なる。
学校におけるインフルエンザの出席停止期間を定める学校保健安全法施行規則では、発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでを出席停止とするが、「出席停止を解除するために医師による治癒証明が必要とする規定はない」(文部科学省スポーツ・青少年局学校保健教育課)。文部省がまとめた『学校において予防すべき感染症の解説』に「症状により学校医又はその他の医師において

感染のおそれがないと認めた場合には、 登校(園)は可能」とあるため、文科省保健教育課は「これを治癒証明を求めるものと解釈する自治体はあるようだ」とも付け加える。
一方、厚生労働省が策定した「保育所における感染症対策ガイドライン」は、再登園において「医師が記入した意見書が望ましい感染症」の1つにインフルエンザを挙げている。ただし、「登園するにあたっては一律に届出書を提出する必要はありません。(中略)届出の要否については、個々の保育所で決めるのではなく市区町村の支援の下で地域の医療機関や学校等と十分に検討して、決めることが大切」とする。

★ 09年に国が「意義なし」と通知

沖縄県が学校や民間事業所だけでなく保育所でも「治癒証明は意義なし」とする理由には、新型インフルエンザが猛威を振るった2009年に厚労省と文科省から出された事務連絡もある。

同年10月に厚労省は「新型インフルエンザによる外来患者の急速な増加に対する医療体制の確保について」と題する事務連絡で、「再出勤に先立って医療機関を受診させ治癒証明書を取得させる意義はないことについて、周知すること」と通達した。厚労省健康局結核感染症課によるとこれは新型インフルエンザに限ったものだが、「沖縄では県や医師会、専門家などの話し合いの結果、新型インフルエンザで治癒証明に意義がないのであれば、季節性でも同様とのコンセンサスに至った」と説明する。

文科省も厚労省と同じ時期に、「新型インフルエンザに関する対応について(第17報)」という事務連絡を出し、「学校保健安全法第19条の規定に基づく児童生徒等の出席停止を行った場合などでも再出席に先立って治癒証明書を取得させる意義はない」としている。これについて文科省の担当官は、「そもそも学校保健安全法では治癒証明を求めていないが、慣習的に必要とする施設が多かったので、あえて出した」と言う。すなわち文科省の通達は、新型か季節性かを問わず、インフルエンザの治癒証明を求めていないことを念押ししたものだ。

とはいえ、地域の医療機関の意向を受け、学校などでの治癒証明を必須とし続ける自治体がある。医療機関が林立する都市部のある自治体担当者は、「地元の学校医会や医師会と協議した結果、季節性インフルエンザでは感染拡大防止の観点から医師による治癒証明が必要と結論付けた。区立学校では登校再開前に再度、診察を受けるよう指導している」と言う。そのような現状に対して、「感染拡大予防というよりも再診料目当てではないか」と批判する声も聞かれる。実際その自治体では、学校医を受診した場合に限り治癒証明の発行手数料を自治体が負担しており、行政が学校医を受診するよう患者を誘導しているようにも見える。

詳しくは日経メディカルの記事へ
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201801/554372.html

矢寿井感染制御研究室
高原和男